tictacjintonicのブログ

万人に読まれる可能性のある個人的なメモだと認識しています

スティルインラブ ('22.05/22)

 長い間、携帯の待ち受け画面を初期設定のままにしていた。これには些細な理由があって、待ち受け画面に適する画像データを探すのに難儀してしまうからだ。自分の気に入った画像をあの独特なアスペクト比にうまく合致させることがなんとも難しく、これではいけない、だめだと納得できず、結局デフォルトの壁紙のまま使い続けていた。

 しかし先日、壁紙を新しく設定した。4月上旬のことだった。その4月とは、僕にとって非常に困難な月だった。3月に内定取り消しのサインをしていたので、”本来ならば”4月1日から働き始めるはずだったが、実際は相変わらず無気力に日々を過ごすだけだった。正直、当時はエヌシーケーのCMを観たり名前を聞いたりするのも苦痛だった。

 それでも当時僕が新たに選んだ待ち受け画像は中央競馬の競走馬だった。名前はスティルインラブ

 2003年に三歳牝馬クラシックを制した彼女は、その後一度も勝ち星を挙げることなく引退した。三歳時には名牝エアグルーヴの仔アドマイヤグルーヴと何度も激突し、その都度人気を覆してクラシック三冠を手にした。

 彼女は当時まだ若手だった幸英昭騎手に栄光の牝馬クラシック三冠をプレゼントしたが、本来の最終戦であるエリザベス女王杯(※1)では辛くも好敵手アドマイヤグルーヴに届かなかった。その幸騎手が2021年11月に初めてエリザベス女王杯を優勝した。競走馬の名前はアカイイト。かつて牝馬三冠を取りながら、エリザベス女王杯という忘れ物をしたスティルインラブアカイイトによって幸騎手はその忘れ物と結ばれることができた。

 今になって思うと、スティルインラブの写真を待ち受けにしたのは、いかにも過去に囚われた昭和のオヤジのような意図が自分の中に見える。それでも当時は何かを変えたかった、自分の意思をあてなく表明したかったのだと思う。そして今でもその思いは多少なりともある。

まだ愛している、それはいつか赤い糸で結ばれるのだろうか。